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first created: 2003-10-07
last modified: 2003-10-07

2003-10-07

新民主党党大会と松原仁

politics and freedom

10月5日、自由党が合流して初めての民主党党大会が開かれた。しかし、自民党がわざわざ日曜日に先の内閣入れ替えで国土交通省大臣となった石原伸晃日本道路公団総裁 藤井治芳 の会談をセットアップ、藤井に辞職勧告を突きつけるというメディア戦略に正式マニフェストも発表された合併党大会も霞んでしまった。» 藤井道路公団総裁を更迭 後任は民間人軸に調整 (Sankei Web)

この道路公団総裁の問題は今日になって大臣の辞職勧告を藤井総裁が辞任を拒否、来月の総選挙前に点数を稼ぐ予定だった現政府には頭痛の種を残す結果となった。石原伸晃は殆ど冷静さを失い、「解任」、(藤井が法的に訴えるという話について記者に訊かれ)「受けて立つ」と答え、かなり怒っている風だった。総裁が辞職を拒否するなど予想にもしていなかったに違いない。» 道路公団:藤井総裁、辞表提出せず 国交相が解任手続き指示毎日新聞

石原といえば、石原慎太郎の三男 石原宏高 が東京3区からの出馬を決めている(長男は先の伸晃、次男はタレントで気象予報士の石原良純だ)。この三男は旧興銀出身、先月までみずほフィナンシャルグループで参事役を務めていたらしい。この選挙区は勿論、僕の住む品川区の選挙区(それに大田区の一部と伊豆諸島や小笠原といった島嶼部を含む)である。
» 石原都知事の三男 衆院選出馬もスポニチアネックス
» 石原宏高氏 衆院選挑戦決意スポーツ報知

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2000年の総選挙は当時首相だった突然の小渕恵三の死後、密室で決められた森喜朗の低い内閣支持率の下、野党有利で戦われた。それでも自民党は233議席を獲得、連立を組む公明党や当時の保守党を合わせ過半数を維持、政権に踏みとどまったのだった。» Mainichi INTERACTIVE 総選挙2000

僕はそのときの総選挙で小選挙区は民主党の松原仁に投票した。僕は小沢一郎の自由党支持だったが、小選挙区で自由党候補が勝てないのは火を見るより明らか、比例では自由党に入れたものの、小選挙区では民主党に投票したのだった。

僕は憲法改正(僕は改正より廃憲を主張するが)に臆病で、横路孝弘や現民主党代表 菅直人 といった左派におもねる民主党が嫌いだった。しかし、自民党の既得権益を追求しただけの、東京といった都市に住む人間を限りなく無視した政治を変えるためには野党に政権を替わってもらうしかなかった。閉塞した日本政治を変えるためにはいくら自分と違った政策を持つ政党でも投票するほかなかった。

僕が投票した松原は僅差で自民党の内藤尚を破り、見事当選した。だから僕はその衆議院選挙の結果に苛立った。国民はいつも政治に文句を垂れ、変えなければと言っているくせに、いざ選挙となると自民党に投票する。東京はまだいい、しかし地方では恐ろしいほど自民党への支持が高い。無性に腹が立った。

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今回の選挙 - 10月10日解散、11月9日投票は本決まりのようだ - でもまた、バブル崩壊後、不良債権に身動きを取れない、自信を失った日本、しかし相変わらず地方の権益と官僚が支配する日本を本当に変えたいのかどうか、国民の審判が試される。民主党と自由党は合併し、菅の下政権奪取を合い言葉に総選挙を戦う。勿論僕は民主党と自由党との合併に賛成である。そして再度、東京3区から出馬する松原仁に投票するつもりだ。

そんななか、昨夜、大井町にあるきゅりあんで「脱官僚支配宣言!!」と題された松原仁の国政報告会があった。僕がきゅりあんを訪れるのは成人式以来のことだ。つまりちょうど10年ぶりだった。成人式でも使った大ホール - 1074席あるという - には思った以上に多くの人間が詰めかけていた。19時10分、予定より10分遅れてスタートしたときには9割方席は埋まっていた。

僕がこのような政治の集会に参加するのは初めてのことだった。政治の集会、それも1議員の国政報告会なんぞ大したものではないのだろうと高を括っていた僕は東急大井町駅前に黄色の蛍光色のスタッフジャンパーを着た若者がすでに立っているのを見てすこし驚いた。そして和服を着た上品そうなおばあさんがそのスタッフにきゅりあんの場所を訊ねているところを見て、それなりにちゃんとしたものなのかと思った。実際にきゅりあんの大ホールで多くの人々が開演を待つ姿を見て、自分が一角の代議士の集会に来たことを思い知らされた。

松原代議士の集会がいつもこのように盛況なのかどうかはわからない。総選挙前でいっぱいになっていたのかもしれないし、もしかすると元日本テレビキャスター、現在はフリージャーナリストの櫻井よしこがゲストスピーカーとして招かれていたからかもしれない。僕が来た理由のひとつも住基ネットに反対する櫻井よしこの話を聴きたかったことにあった。櫻井よしこは国民共通番号制に反対する会の代表でもある。

予想通り、観客の大部分は50を超えた中高年の人々だった。夫婦同伴で来ている人が多かった。また、街の商店街の店主や中小企業の経営者らしき人が多かった。僕はこういった人々はどちらかというと自民党支持(創価学会であれば公明党支持)と思っていたので、意外な多さに少し驚かされた。

30代から40代にかけてのスーツを着たサラリーマン風の人もぽつぽついた。学生らしき若者もいたことはいたが、正直のところ、若い人間は殆ど蛍光色をまとったスタッフに占められていた。僕のようにぼろぼろの黒のジャンパーにジーンズ姿の人間は残念ながら希少種に分類された。

僕は今までの人生のなかでこれほど多くの年輩の人間に囲まれたことはなかった。動物園の柵に入れられたテナガザルのような気分だった。この気分は僕が英国のオークニー諸島を旅したときに味わったものと同じだった。そのときも冬でオフシーズンということもあり、日本人の旅行客なんて人っ子ひとりいなかった。僕はその島に5日間滞在したが、現地の白人の目が動物園の猿を見るような感じに思われた。

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松原仁の国政報告会はまず応援に駆けつけた品川区と大田区議会の民主党員の紹介から始まった。そのあと、東京都議会議員 馬場裕子(僕の姉の母校、小山台高校出身のようだ。小山台高校は運動会の棒倒しで有名。)の挨拶が始まった。このとき、東京3区から出馬する石原三男の話が出たが、さすがに石原慎太郎を批判する言葉は出てくることはなかった。東京都民に人気があり、松原が都議会議員当選時、石原都知事の支援を受け、秘書が前に石原の秘書をやっていたとなると批判するわけには行くまい。

彼女の挨拶が終わり、ついに松原仁の演説となった。この集会のスローガン「脱官僚支配宣言!!」でもわかるように、彼はまず官僚批判から始めた。厚生労働省の独立行政法人 雇用・能力開発機構スパウザ小田原といった箱モノ不良資産をとんでもない金額で投げ売っていることを批判、さらに保養施設グリーンピアで大穴を開けた年金資金運用基金(旧年金福祉事業団)の出鱈目ぶりを引き合いに出し、こういった失敗に対して誰も責任を取ろうとしない官僚を批判、どれもこれも官僚の天下りのため、こうしたいい加減な官僚支配からの脱却を訴えた(会計検査院の発表する独立行政法人の財政状況を見ると、先の道路公団も含めて終わっている)。
» 施設売却:雇用・能力開発機構が投げ売り(毎日新聞)
» 依然続く 雇用・能力開発機構の施設投げ売り社団法人行革国民会議
» 施設の"投げ売り"で露見した「改名」特殊法人のデタラメぶりWeb現代

ここで彼は自民党に話を変えた。故小渕恵三の選挙区を継いだ娘の小渕優子の例(世襲制か、日本の選挙区は)を引き合いに出し、二世議員や官僚出身議員が6割、7割を占める自民党が日本を駄目にしている官僚支配を打ち破れるわけがないというのだ。なぜここで二世議員がいきなり登場したのかといえば、それは石原宏高の出馬を念頭に置いてのことだと思う。

さらに官僚批判は続く。国益を無視して欧米に押しつけられた銀行のBIS規制に抵抗することもしないから、そのBIS規制に縛られた銀行が苦しみ喘ぐ中小企業に貸し渋る構図を生み出していたと批判するのだ。正直のところ、僕はこれはどうかなと思う。貸し渋りは確かに問題だが、根底には不良債権の問題があり、やはりこれをどうにかしなければ日本の再生は不可能だろう。僕はThe Economist9月27日号にあった日本経済への処方箋 - セーフティネットを張った上でのハードランディングを支持する(残念なことに民主党のマニフェストでは不良債権について抽象的な文句でごまかしている)。» Fixing Japan: Kill or cure? (Economist.com)

自宅に戻ったあと、ニュースステーションテレビ朝日)で菅と小沢、両人が出演しているのを見た。ここでも主に官僚批判、官僚支配からの脱却を中心に語られ、民主党は今回、これを前面に押し出して戦うようだ。松原仁の演説もこれに沿ったものなのだろう。しかし、経済と別にあるもうひとつの大きな問題、それはイラク派兵や拉致問題を含めた北朝鮮との外交が大きな政治テーマとなっている今、憲法問題についてこれまた民主党のマニフェスト同じく語られることがなかったのは非常に残念だ。

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松原仁の演説後、ゲストであった櫻井よしこが壇上に上がり、テレビで聴くのと同じように柔らかな口調で語り始めた。おそらく50歳を超えているであろう、白いスーツに身を包んだ彼女を遠目からだったが十分その美しさを感じ取れた。彼女は日本の間違った教育について話し始めた。

彼女はOECD(経済協力開発機構)が各国の児童について調査したレポート* の結果、日本は成績自体は上位に位置していたが、論述問題で無回答の比率が高かったことを紹介、知識を断片的にしか教えていない学校教育、文部科学省のゆとり教育を批判した。

少し話が冗長となり、退屈しかかったところで今度は先の通常国会で成立した国立大学法人法案について話し始めた。この国立大学を独立行政法人化する法案では、6年間の(教育・研究内容、財務内容等に関する)中期目標を各大学が決定するのではなく、文部科学大臣=文部官僚が決定することに対して、大気・海洋起源論や地球惑星学でトップレベルの東京大学大学院教授 松井孝典カミオカンデ神岡宇宙素粒子研究施設)で大マゼラン星雲での超新星爆発で発生したニュートリノを世界で初めて観測、ニュートリノ天文学渡邊靖志)という新しいジャンルを発掘、昨年、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東大名誉教授の例を挙げ、6年間という短い期間での研究で簡単に成果を上げられるわけではない、官僚主導の大学教育に未来はないと警告を発する。» 法人化でどうなる、国立大学 3氏に聞く(毎日新聞)

また、同時に成立した「独立行政法人国立大学財務・経営センター法案」、「独立行政法人大学評価・学位授与機構法案」などを見ると、結局、役人の天下り先を作っただけに過ぎないように見えてくるのだ。» 第156回国会 議案の一覧衆議院

最終的に櫻井よしこから住基ネットに関する話は聴くことができなかった。ちょっと残念、ていうか、かなり残念だった。住基ネットほど官僚のいい加減さをアピールするのには絶好だったと思うのだが。しかし、その代わりと言ったらなんだが、このあと、前民主党代議士であり埼玉県知事となった上田清司が京浜東北線1本でさいたまから駆けつけ(ホントかどうかはわからん)、実際に彼の話を聴くことができた。

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上田清司の応援演説は単純明快である。ところどころにユーモアを混ぜ込みながら、官僚主導による自民党政治を叩き、拉致議連などで活躍する松原仁を持ち上げ、聴衆の関心を殺がない。

上田は4月の神奈川県知事選で民主党を離党した、松原と同じ松下政経塾出身の知事 松沢成文 と同じく民主党を離党、埼玉県知事選に打って出て当選した。自民・民主両党が官僚出身者を独自候補に擁立しようとした動きに反発、自ら知事選に立候補したのだった。上田は民主党右派であり、松沢と同様、菅を代表とする民主党左派の影響力に嫌気が差したという話もある。昨年の民主党代表選では若返りすらできなかったこともあるのだろう。どちらにせよ、民主党は松沢・上田と国政に必要とされる人材を自治体の首長に失ったことは非常に大きかった。

その上田清司の話が終わりを告げると、急にのぼりを持った蛍光色のスタッフがホールの両側に並び、国政報告会はいつの間にか総決起大会に模様替えした。松原仁は自分にはなんとか軍団(勿論、石原軍団のことだ)が応援に来ることもなく、メディアへの露出も少ない、単なる一サラリーマンの息子に過ぎないことを自嘲気味に話して笑いを取り、相手(石原宏高)がブランド派とすれば、自分は市民派、庶民派、大衆派だと声を大にして支持を訴えた。

そのとき、僕はメモにこう書き殴った。

大衆こそいちばんブランドに弱い

石原慎太郎とその三男というブランドは限りなく強い。石原宏高が今まで銀行で働いてきた経歴は政治については未知数という負を背負い込む一方、社会での実経験の豊富さをアピールできる利点もある(みずほ出身であることはマイナスに働くかもしれないが)。

東京3区の選挙はまさに安倍晋三を幹事長に置いた自民党のイメージ選挙にマニフェストを旗印に政策選挙を仕掛ける民主党という構図そのものを映し出す。 民主党するべきことは、民主党になれば日本がどう変わるかをわかりやすく国民に提示し、小泉政権下、改革という空疎な掛け声だけで何も変わっていないことを批判し、政権が変わらなければ日本も変わらないのだということを国民に訴えることだ。

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僕からすれば、民主党の発表したマニフェストは失敗作である。基礎年金に消費税を充てる、道路公団を廃止し、高速道路を無料化する、治安回復に警察官を増員するといった政策はいい。また、 [5] 競争力強化・技術力強化に向けて、知的財産権立国づくりをすすめます といった間違った施策が謳われていることも別にいい。しかし、 I はじめに ―菅直人から国民のみなさんへ と題された代表菅直人からの言葉に魅力が感じられない。

菅が学生時代から使っているらしい「最小不幸社会」という共産主義・社会主義社会を想起させる言葉を用いて民主党が描く日本の未来像に共感が持てないのだ。今、民主党がもっとも訴えたいことは政権交代だろう。マニフェストではまず、その政権交代が意味すること - 官僚政治からの脱却 - をシンプルな言葉を使い、説明することではなかったのだろうか。そしてそこから生み出される生まれ変わったダイナミックな日本社会を提示してほしかった。

それでも僕らは11月の総選挙で民主党に投票するべきだ。枝葉を気にしているときではない。自由党が合流し、政策的にも政権を担当する能力にも安定感を増した民主党に投票するべきだ。このままの自民党では日本は前進しない。自民党に変化を促すためにも民主党が政権に着かなければならない。

僕は松原仁に投票する。庶民は石原というブランドに惹かれてしまうかもしれない。しかし僕は信じる。国民は変化を望んでいることを。そして庶民はきっと正しい選択を行うことを。信じることからすべてが始まる。

* おそらくOECDの発行したレポート Literacy Skills for the World of Tomorrow: Further Results from PISA 2000 のことを言っていたのだと思う。これはe-books版 (pdf, 4405112 bytes) として無料でダウンロード可能。日本語でのサマリは文部科学省のWebサイトで読むことができる。また、無回答数が多かったことについては国立教育政策研究所総括研究官 鳩貝太郎 のレポート「教育シリーズ OECDによる生徒の学習到達度調査 (pdf, 72457 bytes)」(化学教育協議会)でも言及されている。
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