2003-08-16
another 'california dreaming'
ITバブル崩壊後、the Golden State カリフォルニア州 が大きく揺れている。経済不況に対する無策や金をばらまきから巨額の財政赤字に喘ぐカリフォルニア州知事Gray Davisに10月7日、リコール選挙が行われることが決定、リコール成立後の知事選に356人が立候補した。3500ドルの保証金と65人の署名さえあれば立候補できるという敷居の低さから無名の市民からちょっとした有名人(例えば、ハードポルノ雑誌 Hustler の発行人Larry Flint)まで、冷やかしから(本人だけが)本気に思っている者まで、ばからしい数の立候補者が至るところからきのこように生えだしてきた。» カリフォルニア州知事選挙の立候補の届出は356人 (Going My Way)
勿論、目玉は「ターミネーター」 Terminator、「ターミネーター2」 Terminator 2: Judgment Day でハリウッドスターの仲間入りを果たし、今夏は「ターミネーター3」 Terminator 3: Rise of the Machines を引っさげて来日したアーノルド・シュワルツェネッガーだ。しかしよく考えてみると(考えなくてもだけれど)、彼ってこの「ターミネーター」シリーズぐらいしかないんだよね。
オーストリアからの移民、ボディビルダーとしては一流だったが(「アーノルド・シュワルツェネッガーの鋼鉄の男」 Pumping Iron)、英語はまともに話せなかった彼は「コナン・ザ・グレート」 Conan the Barbarian や「キング・オブ・デストロイヤー コナンPART2」 Conan the Destroyer というくそ映画に出演、科白を棒読みしても違和感のない「ターミネーター」のロボット役という、彼のフィルムキャリアとしては最高かつ唯一の役柄を得た。
「ターミネーター2」の大ヒットで彼がBlockbusterを生み出せるスターと勘違いしてしまったハリウッドはその後、ダニー・デビートとともにシュワルツェネッガーの意外性をついたコメディ 「ツインズ」 Twins と「ジュニア」 Junior を除くと、「ラスト・アクション・ヒーロー」 Last Action Hero や「トゥルーライズ」 True Lies、「イレイザー」 Eraser やら「エンド・オブ・デイズ」 End of Days なんていう駄作を作り続けた。ハリウッドのキャリアにいい加減限界を感じたのか、アーニーが選んだキャリアが政治家だった。
アーノルド・シュワルツェネッガーが共和党支持者で、政界に野心があったのは以前から有名だった。そして、夢のカリフォルニア=ハリウッド繋がりといえば、同じ共和党から出馬し、最後には大統領まで登りつめた男 ロナルド・レーガン だ。西部劇俳優(ジョン・ウェインもかちかちのタカ派だった)にありがちなこてこてのタカ派だったレーガンと違い、シュワルツェネッガーにはスクリーンから離れると、MBAも取得している男らしく知性を感じる。また、共和党員とはいえ、奥さんがケネディの姪にあたるマリア・シュライバーということも影響しているからか、ラティーノが多く、民主党の基盤であるカリフォルニアの世論を意識してか、銃規制賛成、ゲイの権利拡大や中絶容認などリベラルな政策を打ち出すようだ。
ハリウッドスターの立候補にカリフォルニア州は結構盛り上がっているようだが、東海岸のエスタブリシュメントは冷ややかに眺めているらしい。» Lexington: Running Man (Economist.com)
しかし上の記事にあるように、レーガンもカリフォルニア知事選に立候補したときは既成の政治家たちには"joke"と笑われたらしい。それでも彼は圧勝した。そして今回、アーノルド・シュワルツェネッガーは彼の人気を考えると、1966年のレーガンと同じようにカリフォルニア州知事を勝ち取ることだろう。勿論、それはリコールが成立したという仮定の下でだが。
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The Economistは今回のカリフォルニア州の迷走 - リコール騒ぎ - をLeadersでアメリカで流行りの住民投票 (Initiative, Referendum) といった直接民主主義への傾斜に反対、強く批判していた。The Economistはほんの9ヶ月前に再選を決めたカリフォルニアの有権者がセックス・スキャンダルも起こさず、汚職にまみれたわけでもなく、ただ政治に能力がない (In short, he is a disaster.
) Gray Davisをリコールによって権力の座から引きずり落とすのは方法論としても間違っているし、フェアではないと主張する。
確かに、彼が現在のカリフォルニア州の混乱を生んだのであれば、まず議会が不信任案を可決し、彼をクビにすればいいだけのことである。これがアメリカであれ、議会制民主主義の母国 イギリス であれ、そして日本であれ、間接民主主義 representative democracy を基本とする国では当たり前のことだろう。
アメリカには直接民主主義が根強いと言われる。特にカリフォルニア州では今まで何度も住民投票が行われ、重要な問題を決定してきた実績がある。しかし、そんなアメリカでも大統領は直接選挙ではなく間接選挙で選ばれる(国民は州の代表人をfirst takes allで選出する)。
日本でも首相公選制(首相官邸)を求める声が高まったり(小泉は首相公選制実現を公約にしていなかったっけ)、各地で住民投票を行い、その結果を行政に反映させるように求める動きが活発だ(吉野川可動堰建設をめぐる住民投票は記憶に新しい)。地方自治体首長のリコールは最近では豊郷小学校取り壊しをめぐって住民と町長が対立した豊郷町の例(京都新聞)がある。しかし、このあと行われた町長選で大野町長が勝利、市民運動や住民運動のきな臭さを感じさせるものだった。
また、カリフォルニア州知事選をめぐる狂騒をアメリカらしいと持ち上げる人間もいたが(貧乏人でも立候補できる、云々)、356人の立候補者がいたとしても、まともに選挙を戦えるのは数人である。そして、その選挙に勝つためには莫大な金が必要なことを忘れてはならない。アメリカほど金権政治がはびこっている国はないのだ。
一方、libertarian(アナーキスト・無政府主義者に限りなく近い自由主義信奉者)の傾向が強いThe Cato Instituteの記事ではリコール選挙により、Davisや民主党支配の議会がリコール投票のことを考え、例えば、経済にダメージを与える増税に消極的になるため、Davisが勝とうが負けようがすでにtaxpayerの勝利だと持ち上げている。これまたちゃんちゃらおかしい。
あまりにひどい経済の失策を犯しているのであれば、議会が州政府の愚挙に歯止めをかけるべきであり、世論が圧力をかけ、政府の方針の転換を迫るべきではないか。知事を選んだのは同じカリフォルニアの有権者である。本当であれば、(リコールではなく)次の選挙で彼を落とすべきである。しかし、このように直接民主主義が必要以上にもてはやされるのはどこかの国と同じように民意と為政者・立法者の感覚があまりにかけ離れているからだろう。
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アーノルド・シュワルツェネッガーが今秋、映画のワンシーンのように Hasta la vista, baby とGray Davisを葬り去ることは確実だ。そのあと彼がロナルド・レーガンの如く政治キャリアの頂点 - 大統領まで登りつめることができるかどうか、それは今の段階ではわからない。彼がそこまでの野望を抱いているかどうかもわからない。しかし、もし彼が大統領になれたとしたら、それこそ"california dreaming"では済まない。僕らはまさに"American Dream"が実現した瞬間を目撃することとなる。■
王シュレットの是非
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現在、ダイエーホークスの監督であり、世界のホームラン王(アメリカ人は認めていないだろうが)王貞治が怒っているらしい。何に怒っているのかって、フジテレビのバラエティ番組 水10!ワンナイ で放送された1コントにご立腹とのこと。フジテレビは即座に陳謝したらしい。» 王監督怒ったフジテレビに猛抗議(スポーツ報知)
僕はその前に放送される トリビアの泉 は見ているが、正直のところ、宮迫や山口智充、ガレッジセールら吉本興業の芸人に固められたワンナイというお笑い番組には興味がない。どうも面白いと感じられないのだ。宮迫はまだしも、山口は明石家マンションに出ていた頃の方がずっと面白かったと思う。
ところが、その日、僕はザッピングしていて、偶然、そのコントを実際に目の当たりにした。かなり衝撃的な(笑劇的では決してなかった)コント。便器に王さんの顔を入れ、彼のおちょぼ口から水が飛び出す - つまり、ウォシュレットならぬ王シュレットというギャグなのだ。これだけでつまらないこと請け合い。僕はこれに2ちゃんねるで 【野球】ダイエー王監督怒った!フジテレビに猛抗議 というスレッド(すぐに見られなくなると思うが)を見るまで気がつかなかった。
このコントを見たとき、僕もなんとなくまずいのではと思った。やりすぎかなと。そして、さして面白いわけではなかったので、チャンネルを変えてしまった。話によると、そのあと宮迫は王さんの顔にうんこまでしてくれたらしい(勿論、本当にしたわけではなく、言葉で示唆したということだ)。
2ちゃんねるでは、なかにはバラエティに文句をつける王貞治にたかがお笑いじゃん、ケツが小さすぎと番組の肩を持つ者もいたが、ギャグとしてもつまらないし、国民栄誉賞を取った偉大な選手に失礼だという意見が殆どだった。しかし、最近の2ちゃんねるは本当に爺くさいというか、あほみたいに保守的だよな。
僕は先に書いたようにこのコントを面白いとは思わなかったし、下品でしようもないものだと思う。しかし、国民栄誉賞を受賞した偉大なホームランバッターであれ、このような下品なギャグの対象にしてはならないということは決してないはずだ。芸能人でない、芸人ではないとはいえ、彼はプロ野球というエンターテインメントを生業にしてここまでやってきたのだ。残念ながら、彼はおちょくられてもしようがない。
そして取るに足らない下品な番組をフジテレビが制作していけないということにもならない。すべての番組が良質で当たり障りのないものであれば、ただでさえInternetといった新しいメディアに押されっぱなしのテレビがさらにつまらなくなることを必至だ。地上波は確かに公共の電波を使い、ソフトを配信しているわけだから、ある程度の質が求められることは確かだろう。しかし、ワンナイのようなごみ番組があれば、ほかで良質の番組を提供してくれればいい。オーバーオールで釣り合いがとれればいいことだと思うのだ。
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昔に比べて、僕が子供のときと比べてテレビでの表現はかなり規制されている。昔は平気でプライムタイムに放映されていたスプラッタムービーは宮崎勤以降、殆ど放送されなくなった。されたとしてもカット、カット、カットだ(僕は恐がりだからあまり好きなジャンルではない)。セックスシーンも影を潜め、昔は結構おっぱいが何個も露出していたのに、現在は出ているタレントの胸は見違えるほど大きくなったくせして、そのおっぱいが出てくることは滅多にない(だから、テレビ朝日の特命係長 只野仁にはノスタルジーを感じる)。
表現の自由を守るために自主規制を行うことは政府による干渉を許すことよりもまだましだと思う。しかし、視聴者を怖がるあまり、極端に安全志向に墜ちた制作側が原因で、不必要な言葉狩りが放送禁止の言葉を徒に増やしていったことを考えると、今のテレビ業界は作品=表現という観点からはまったくもって失格だろう。どんなに下品で不快なものであれ、それが実際に犯罪行為に加担しているのでなければ、表現の自由のなかに守られるべきだ。
駄目な奴をみんなで叩き回る行為が教育上、好ましいことでないとしても、フィクションと現実を見極められるものであれば、それほど心配するほどのことではあるまい。大体、教育上、悪い番組があれば、親は見せるな、テレビを子供部屋に置くなんていうばかげたことをするなよ。» 「ネプ投げ」「しりとり侍」打ち切りに (ZAKZAK)
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王シュレットの問題は王貞治の顔にうんこするというギャグが王貞治という個人に失礼だったことにあるわけではない。そのコントがウォシュレットと王シュレットという単なる駄洒落に終わってしまったことが問題だ。王の顔にうんこがタブーであるならば、そんなタブーは平気で打ち破ってほしい。しかし、そのタブーを打ち破りたいのであれば、駄洒落のレベルでは駄目だ。
諧謔(ユーモア)をもってタブーを打ち破るのであれば、その諧謔には諷刺が込められなければならない。もしそれがなんらかの諷刺を意図して作られたのであれば、失礼を承知で書けば、天皇の顔をウォシュレットにしても構わない(右翼の街宣車が怖くてとてもそのような番組は作れないだろうが。まぁ、一般国民もこれには怒るだろう)。
王貞治が怒るのはもっともだ。抗議するのも彼らの自由だ。しかし、フジテレビはあんなに簡単に謝ってはならない。そしてフジテレビは謝る相手を間違えている。彼らは僕たち視聴者に謝るべきだ。宮迫のケツの穴に水をぶっこみ、痛がる宮迫で笑いを取りに行くために、とってつけたような駄洒落で笑わせようとしたことを。
例えば、これまた失礼を承知で書けば、刑務所の便器に王さんではなく6月に亡くなった俳優の名古屋章の顔があったらどうだろう。名古屋さんの口から迸る温水の水圧に宮迫のケツが襲われたら... ブラックすぎるだろうか。■







