2002-08-07
900円のお釣り
僕はこんなに真面目になって国民背番号制について反対する。しかし、その一方で僕が今考えているのは、昨日、職場の自動販売機に忘れてきた900円のお釣りのことだ。900円は痛い。痛すぎる。この自動販売機、煙草の自動販売機みたいに返却レバーを引かないとお釣りが出てこない。そもそもこれが間違いなのだ。煙草の自動販売機じゃあるまいし、どういうことだ?■
nineteen eighty-four
related stories:
- [2002-10-22] 品川区議会と住基ネット
- [2002-08-07] nineteen eighty-four
住基ネットが稼働し始めてから3日が経つ。住民基本台帳法の改正案が1998年に内閣から国会に提出、同国会で自民党・公明党・自由党の賛成多数で可決、その年の8月18日に公布された。この改正は森内閣時(そう、あの森さん、宇和島水産高校実習船「えひめ丸」がお遊び訓練の中の米海軍潜水艦にぶつけられて沈没したとき、ゴルフがやめられなくてしようがなかった森前総理大臣だ)に高らかに宣言されたe-Japan戦略に組み込まれた「電子政府の実現」の柱となる住民基本台帳ネットワークの実現のために行われ、そしてついに8月5日に強い反対の声の中、住民基本台帳ネットワークは稼働した。
問題は反対派の知識人やマスコミ、そして稼働時に住基ネットへの接続を拒否した自治体によく指摘される個人情報漏洩の危険といったことにあるのではなく(勿論、これも大事だろうが)、そもそも先の住民基本台帳法の改正によって国民ひとりひとりに番号をつけることが可能になったということ、これに僕は声を大にして反対と叫びたい。
******
人は生まれながらにして平等と言ったのは福沢諭吉かもしれないが、これからの日本人は生まれながらにして11桁の番号タグつきということになる。番号で呼ばれる人間はこの世では囚人とサッカー選手(ラグビー選手でもいいけれど)ぐらいだ。しかし、ついに僕たちは彼らと同じようにひとつの番号で国に管理される時代に突入したわけだ。素晴らしい。ハックスリィ的に言えば Brave New World 「素晴らしい新世界」といったところだ。
冷静に考えると、今までも税金の徴収に番号がすでに振られている。また、年金手帳にも個人個人に番号が振られている。公的な機関が国民に番号を振っていけないということではないのだ。しかし、住民基本台帳の場合、日本国の住民となった時点で番号が割り振られてしまうことに嫌悪感を抱かずにいられない。
どこからでも住民票を取ったりできるというふざけた理由のために、そして将来的にICチップに個人情報を埋め込まれ、一元的に国家によって番号で管理される社会、それはGeorge Orwellが全体主義国家(つまり共産主義国家、中国・北朝鮮のことだね)を痛烈に批判した小説「1984」で描いた社会とどう違うのか?
******
高度な情報技術 Information Techonologyが発達した社会で、更なる利便性を求める国民とコスト削減という錦の御旗を掲げて国民の期待に応えようとする政府、これでは国民背番号制もやむなしという見方もできるだろう。
例えば、@niftyのiREGiなんかある意味で同じようなものだ。いろいろなお店で@nifty IDというひとつの番号で買い物ができる、確かに便利だ。しかしこれが住基ネットの問題と違うところは@niftyに入会するかどうか、iREGiを利用するかどうかは僕たちに選択権があり、嫌なら利用しなければいい、それだけのこと。一方、日本国民として生まれてくるかどうかは僕たちに選択権もない。そして、それが嫌なら国籍棄てろというのはあまりに暴論過ぎる。
僕たちは確かに便利な社会を欲している。その欲望は止まるところを知らない。しかし、利便性やコストの削減なんていう小さな目的のために liberty 「自由」という僕たちに最も大切な権利を失うことはあまりに哀しすぎる。今の日本社会からorwellの描いたbleakな管理社会を想像することは難しい。しかし、僕らの自由が少しずつ失われていったとき、Big Brotherが出現しないとは誰も言い切れない。
******
元日本テレビアナウンサー、櫻井よしこが代表を勤める国民共通番号制に反対する会(URLがhttp://kokuminbango.hantai.jp/に変わっていた)は住民基本台帳法が改正されたあと、精力的に反対運動を展開してきた。僕はそのあいだ、彼女の発言・行動に心の中で賛同し、がんばってほしいと感じてきた。僕は根本的に間違っていたと思う。僕は行動しなければいけなかった。ひとりひとりが行動を起こさなければならなかった。一度、動き始めた歯車を止めることは難しい。今、僕に何ができるのだろうか?■